今回は、特定外来生物の中でも湿った土地を好み河川などで問題となっているアレチウリにスポットを当ててみたいと思います。
アレチウリ (ウリ科アレチウリ属)
ウリ科特有のつる性の茎と大きな葉が特徴。
群生するため、他の植物を覆い尽くすように拡がり、その土地の植生を大きく変えてしまいます。
茎はつる性で15m以上伸び、100本以上に分枝します。
1つの果実に1粒の種子を付け、果実は3~15個まとまって、節ごとに結実するので、1個体あたりの種子生産量は4,500~78,000粒に達します。
世界での分布:南アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニア、太平洋諸島
日本における分布:北海道~九州
定着段階:分布拡大期~まん延期
環境省 外来種リスト*1:国外外来種№25、総合対策外来種 緊急対策外来種 特定外来種
文献によると、アレチウリが初めて日本で発見されたのは1952年の静岡県清水港。
特定外来種に指定される前から利用に関する情報はなかったとされているため、野生化によりまん延したと考えられています。
アジアやヨーロッパ各国では、ウリ科作物の台木として利用されており、日本でも一部でキュウリの台木に使用されていました。
河川に落ちた種子は水で運ばれ、河川敷飼料畑に大群生している様子がよく見られます。
<アレチウリの生活環>
秋に作られた種子は種皮の水分吸収阻害により休眠状態にありますが、その休眠時に春と冬の低温と乾湿を経て覚醒し、1~2年後に出芽率が最も高くなります。種子は地表面ではあまり発芽しませんが、やや深いところで出芽する傾向にあります。
アレチウリの若芽
アレチウリの開花
結実(↑節ごとに結実するのですごい数になる)
アレチウリの種
アレチウリが繁茂すると、他の植物を覆い隠して駆逐してしまいます。
農作物の収穫が出来なくなるといった被害もあり、アレチウリに対する危機感が高まってきています。
先日、農林業の近代化に尽力されている公益財団法人日本植物調節剤研究協会の会誌でもアレチウリの記事が掲載されました。
アレチウリが繁茂する河川に生息する他の植生を維持しつつアレチウリを衰退させるため、植物成長調整剤フルルプリミドールを検討され、試験を実施しています。結果、発芽や成長に日射を必要とするアレチウリが植物成長調整剤によって矮小化することにより激減した一例が報告されています。
個体数の軽減のため、発芽を抑制する効果のある土壌処理剤フルポキサムの結果も掲載されています。
何もしていないアレチウリの群生(左側)と薬剤対策によってアレチウリの減った様子(右側)
アレチウリは河川沿いに生育を拡大するため、生育地域全体で多くの団体が連携し防除に取り組む必要性も筆者は語られていました。
大きな問題には多くの人の力が必要であるということですね。
(参考文献)
植調第52巻第6号「植物成長調節剤フルルプリミドールを用いた特定外来生物アレチウリの防除」/津田その子
公益財団法人日本植物調節剤研究協会「植調誌」http://www.japr.or.jp/press/index.html
環境省ホームページ生態系被害防止外来種リストダウンロードリスト情報
原色 雑草診断・防除事典/森田弘彦・浅井元朗編著/農文協