長く厳しかった冬もいよいよ終わりを告げそうな季節となりました。
暖地型の芝草であるチャンピオン ドワーフの管理もだんだんと忙しくなってゆく時期です。
この時期の管理がうまくできれば夏場の維持管理も非常に楽になります。
生育旺盛になるまでの間に間違った管理作業や深刻な病害が発生してダメージが出てしまうとなかなか回復しないため、一つ一つの作業に気が抜けない大事な時期でもあります。
さて、まずは防霜シートの効果が非常に良く判る写真をご紹介しましょう。
千葉セントラルゴルフクラブ 2018年3月29日撮影
防霜シートの絶大な効果は納得していただけたでしょうか?
次に、休眠期における着色剤の芝表面温度上昇効果が非常によくわかるものもご紹介しましょう。
冬の晴れた日に着色剤を施用した芝と施用していない芝の①表面、②地中2.5cm、③地中5.0cmの温度を計りました。11時、11時半、12時の温度の上昇がはっきりとわかる時間帯に測ったものですが、着色剤を施用している芝では表面も地中も暖かいのが分かりました。
同じく着色剤の処理濃度や回数を変えた芝表面温度をサーモグラフィーで計測しました。
表2. サーモグラフィーを用いた表面温度計測結果 2014年3月12日(晴天)
サーモグラフィーの結果から、着色剤を濃く塗れば表面温度上昇効果が高くなる傾向が分かります。着色することで最低でも1~3℃近く地温が上昇するということになりますから、冬季の芝の凍上防止や春の芽吹きが良くなる理由の裏付けとなりました。
4~6月のチャンピオン ドワーフの推奨管理ポイント
【順化】
- 3月中旬から4月初旬は、日中に防霜シートを外し、夜間は掛けるようにする。
- 特に降霜があるような場合や、低温になる場合はシートを掛けておく。
- 6月まではアントシアンが発生して芝が赤っぽくなりがちなので気温が安定するまでは適度に温度順化を促すようにする。
- 芽出し促進目的の過剰なN施肥は避ける(細胞内の水分含有量があまり高いと細胞内で水分が凍結を起こすことがある)。
- 最後に降霜を確認した日から起算して2週間経過してから施肥を開始する。
- KやCa施用で耐寒性を向上する(細胞内の水分中のECを上げることで上記の凍結防止につながる)。
<芽出し完了まで・完了後の管理>
【施肥】
- 生育量に沿った施肥を行って盛夏時の旺盛な生育に備える。
- 速効性のNと緩効性のNをうまく使い分けし、密度向上させながら無駄な徒長はさせないようにする。
【刈込】
【スパイキング/コアリング】
- 無垢刃のφ6mmニードルタイン等を用いて通気性・浸透性の向上を図る。
- 未分解のサッチが過剰である場合は生育量と回復性を考慮しながらφ9~12mm程度のハロータイン等を用いる。
- シングルスペースφ12mmハロータインよりもダブルスペースφ9mmハロータインで抜き取り率を向上するのも一案。
【目砂】
- 定期的に実施するほか、スパイキングやコアリング時には適当量の目砂を施す。
- 実施後に芝の生育量が充分旺盛になると期待される場合はわざとスパイキングやコアリングの穴を埋め戻さないこともある。
【潅水】
- 芝の生育量に合わせて潅水プログラムを変更して水量や頻度を上げる。
- 日中散水は効率が悪く、夜間散水は病気を助長するため、早朝散水を心がける。
- ゴールデンウィークあたりは特に芝が活用している水分よりも芝表面から直接蒸発散してゆく水分量の方が勝ることがあり、急激に乾燥害を起こすことが有るので注意する。
- 一度でもローカライズドライスポット(LDS)を発生させてしまうと、その後も発生しやすくなるため注意する。
- 気象情報を基に大量の降雨が予想されるときや、梅雨期は潅水プログラムを変更して水量や頻度を下げる。
- 浸透剤は、急激な乾燥や突然の豪雨対策のためにも2週間に1度程度は施用しておく。
【病害対策(スプリングデッドスポット・中高温性ピシウム・葉枯れ性病害)】
- 初春は総合防除剤を用いて予防散布する。
- その後の芝の生育が旺盛になると期待できる時期より病害発生を確認してからの対処療法に切り替えてゆく。
- 中温性ピシウムは、発生後7~10日間程度見栄えが悪いので予防散布して防除。
- このころの中温性ピシウムは平均気温が23℃近辺、高温性ピシウムはそれ以上の温度(25℃以上)で発生する。夜間の湿度が高いとき、降露・降雨や潅水だけでも発生する。N過多の場合に多発生あるいは激発する。予防にはどのような登録薬剤を用いても良いが、発生した場合は治療に強い薬剤で早期回復を図る。
【病害対策(フェアリーリング)】
- 春に発生し、防除した場所からも再発するほか、新規に発生個所が増加することが多い。
- 菌体密度が局所的に上がると枯れ症状を呈し易い時期でもあり、スポット散水で対応しなければならなくなる場所も出てくる。
- 秋までに防除を徹底するのが望ましく、特にスパイキング時には殺菌剤の散布水量を上げて浸透剤を併用して防除効果向上を図る。
【茎葉処理型植調剤】
- 芽出しがある程度そろった時点で低薬量から使用を開始する。
- 気温が上昇し、生育量が旺盛になるに伴って薬量を上げる。
- 徒長防止・密度向上のために曇天かつ気温が生育適温に向かう梅雨前等に施用する。