これから不定期ですが、芝のコガネムシについてコラムを掲載していこうと思いますのでよろしくお付き合いください。ただ皆さんが知っているような有名なコガネムシは面白くないので、少しマイナーなコガネムシを話題にしていく予定です。
ゴルフ場やサッカーグランド、公園緑地等の芝地、雑草地では、その芝草を餌とする昆虫が沢山います。中でもコガネムシは、幼虫が植物の根をガンガン食べるので、葉を食べるガの幼虫よりも植物のダメージが蓄積されるといわれています。また、何より問題なのは、土の中にいるので虫がいるのかどうかさえ気づかないことが多いのです。
記念すべき1回目のテーマは、ヒラタアオコガネにしてみました。理由は、最近このコガネムシの問い合わせが多く、結構色々なところで話をしていたのですが、肝心の当社のHPに載せていないことに気づいてしまったからです!!
ヒラタアオコガネの成虫
~分布地域~
本州の関東甲信越以西の芝地(主にゴルフ場)に生息しています。
まだ東北や北海道では報告されていませんが、何となく毎年北上している感じなので近い将来本州全域で確認できるのではないでしょうか(但し、長距離移動は苦手なので北海道は無理かも?)。
~生活環~
【卵の期間】
卵でいる期間が長くてのんびりしています。他のコガネムシが2週間くらいで卵から孵って幼虫になるのに、その倍の1ヶ月ぐらい掛って幼虫になります。
【幼虫の期間】
逆に、幼虫の期間は短くてせっかちです。他のコガネムシが越冬している期間も含めて300日くらい掛るのに、60日ぐらいで蛹になってしまいます。地域にもよりますが、成虫が産卵するのが4月下旬~5月上旬で、孵化するのが5月下旬から6月上旬ですから、幼虫は8月上旬には、ほとんど蛹の準備に入ってしまいます。
生まれたばかりの幼虫
なので、他のコガネムシの幼虫が、餌を一杯食べている8月中~9月の時期には、とっくに蛹~成虫になってしまっています。そうすると、このコガネムシを防除しようとした場合、食欲のピークだと思って8~9月に一生懸命殺虫剤を散布しても、既にお腹いっぱいで蛹になる準備をしているので、薬の効果が発揮されないことが多いのです。
昆虫の持って生まれた生態とはいえ、上手くできていますね。
【成虫の期間】
成虫で越冬しますので、9月中には羽化して、そのまま冬の間中、土窩(どか/幼虫が蛹化する時に土を固めて作った蛹室)でじっとしています。たまにフライングして秋に土壌中から脱出するのもいるようですが、ほとんど土の中で待機しています。
春になると成虫は土の中から出てきて、一斉に交尾行動を行います。但し、意外とデリケートな虫で、晴天の午前中にしかメスは出てきません。曇っていたり雨が降っている日は、メスも交尾がしたくないようです。メスがフェロモンを一杯放出するので、晴天の日の芝地は、1匹のメスにオスが何頭も群がっています。ムシの世界も子孫を残すために必死です。交尾が終わったらメスはさっさと土壌中に戻ってしまいます。この辺は、用が済んだらさようならするツンデレ系のお姉さんと一緒ですね。出遅れたオスがかわいそうです!
メスと交尾できずにあぶれたオス成虫の群れ
最後にこのコガネムシは、10年前までは、ほとんど芝地の多いゴルフ場でも問題になっていなかった虫ですが、今では、毎年被害報告を受けるほど拡大しております。もしゴルフ場に従事されている関係者の方がいらっしゃったら、少しだけ本コラムを読んでなるほどそうだったのか!!と思ってくだされば幸いです。