10月に入ると日も短くなり、旺盛だったチャンピオンドワーフの生育も鈍くなります。完全休眠に至るまでのこの時期は、翌年の品質を左右する非常に重要な時期となります。
一旦病害が発生してしまうと病斑が翌年春まで回復しないため注意が必要です。9月以降はスプリングデットスポット、葉枯れ性病害、ピシウム病、フェアリーリング等の病害が出ないよう管理して下さい。
埼玉県チャンピオンドワーフ採用ゴルフ場 2014/9/1撮影
埼玉県チャンピオン採用ゴルフ場(着色されたチャンピオンドワーフ) 2018/12/20撮影
10~12月におけるチャンピオンドワーフ管理の要点
- 晩秋・冬季の管理:
- 施肥:
- 10月初旬は一度生育量が低下するが、中下旬には再度生育量が若干向上する。休眠と翌春の芽出しに備えて地下部に貯蔵養分を蓄える時期であるため、しっかりと施肥する方がよい。
- 11月中旬にかけて生育量が低下する。完全休眠するまでに止め肥を打つ(施肥をする)。
- 植物成長調整剤:着色剤施用後や防霜シート敷設後の徒長を抑える目的で、着色剤施用前や防霜シート敷設前に低薬量で施用する。
- 刈込:刈高を休眠前までに5mm以上になるように徐々に上げる。
- 凍害・冬季枯死の防止対策(着色剤・防霜シート・潅水・浸透剤):
- 防霜シートの使用は降霜や氷点下による直接的な凍害の防止につながるほか、シート内で水分が転流することで保湿効果も得られ、冬季乾燥枯死防止にもつながる。どのようなタイプのシートであっても敷設しないよりは敷設する方が絶大な効果がある。また、春の芽出し促進効果も下記のどの対策(項目)よりも高い効果が得られる。
- 着色剤を使用することで地温上昇効果が得られる。
- 冬季とはいえ、頻度良く潅水することが望ましい。例えば、1~2回/週程度の潅水で土壌水分を保持することで冬季乾燥枯死率が軽減が期待できる。
- 浸透剤の定期的な使用は水分浸透性を向上させ、保湿効果や潅水された水を均一に分配する効果もあり、乾燥による枯死軽減が期待できる。
- 上記全てをうまく組み合わせて実施することが理想。
- 病害対策:
- 防霜シートを敷設する前に雪腐れ病対策のため薬剤を施用する。
- 葉枯れ性病害・中低温性ピシウム病・フェアリーリング・スプリングデッドスポットなどが発生する時期で、防霜シート敷設後には雪腐れ病が発生する可能性がある。
- どの様な病害が発生しても翌年の初夏まで病斑が残ることが多いため、基本的には何も発生させないよう“予防散布”を徹底する。
重要病害 スプリングデッドスポットについて:
- 元々は原因不明のものも含め、春先に芝が芽吹いてこない現象を総称して「スプリングデッドスポット」と呼んでいた。現在においても病原菌が関与しているバミューダグラスのスプリングデットスポットは4種の病原菌であると考えられている。
- バミューダグラスに発生する重要病害では、防除が最も困難なものの一つ。
- 新規造成したグリーンでは発生が見られず、発生が観察されるのはグリーン造成3~5年後が通常で、早い場合でも造成2~3年後となる。
- 発生初年度は直径が3~5cmと小さく、翌年も同じ場所に発生し、経年するほど病斑が大きくなる。通常は20~50cm、大型のものは直径1mにも達する。
- 感染は9月中旬から11月中旬に根部から開始し、年内は地上部にはなんら症状が見られない。晩秋から完全休眠に至るまでの期間に根部での感染が進み、根の機能が失われた結果、冬季期間中に枯死し、翌春芝が芽吹いてこないという症状を引き起こすものと考えられている。冬季乾燥害が伴った場合や休眠期間が長い地域では甚大な被害が発生することがあるので注意。
- 感染した芝の中心部から回復し、フロッグアイ(カエルの目)と呼ばれる独特な病斑を経た後に完全回復することが多く、完全回復するには8月中旬までかかることがある。
- スプリングデットスポットに関与する4種の菌は、それぞれ生育適温/感染時期が異なるため、現状有効な手段としては9、10、11月のそれぞれ中旬に有効な殺菌剤を散布する。
藻類:*高温期にも活動することがある
-
- 過剰散水を行うと発生が助長される。
- 薄目砂を高頻度で施して発生を抑制する。
- 効果のある防除剤やミネラルを施用して藻類の生育を抑制する。
- 藻類が多発生した場合は地表面を覆って土壌通気性が悪くなるのでスパイキング等を施す。
- 苔対策:
- 9月中下旬から10月中旬にかけてギンゴケの生育が旺盛になる。
効果のある防除剤やミネラルを施用してギンゴケの生育を抑制