コラム

<少し変わった芝害虫シリーズ4>クロスジフユエダシャク

フユエダシャクの仲間は、冬になると発生する珍しい種類のチョウ目害虫(鱗翅目)です。

12月・1月になるとゴルフ場でも飛んできてキーパーの皆様を驚かすことがあります。

ほとんどのフユエダシャクは夜行性で、夜に飛んでいるので、寒い夜に出歩くことのない我々人間の目に止まることはまずありませんが、稀に昼に飛んでいる種類もあります(写真①)。

これはクロスジフユエダシャクという蛾で、昼間に活発に活動します。真冬に飛んでいることから、一般の人からは季節外れに飛んでいる蛾ぐらいにしか思われてないです。但し、ゴルフ場などで、大量に発生すると芝生になにか悪い影響が無いか心配になってしまいますよね。

クロスジフユエダシャク

写真① ゴルフ場のキーパーから届いた12月にゴルフ場で大発生したクロスジフユエダシャク

 

今回は、このクロスジフユエダシャクについて少し紹介いたします。

クロスジフユエダシャク

学名:Pachyerannis obliquaria

科:シャクガ科 エダシャク亜科

前翅長:オス17~19㎜ぐらい メス3~4㎜ぐらい(退化して飛べない)

終令幼虫体長:15㎜ぐらい

分布:北海道、本州、四国、九州、シベリア、朝鮮

食性:(ブナ科クリ属)クリ、(ブナ科コナラ属)コナラ、ミズナラ、クヌギ、アベマキ、カシワ、

(モミジ科)タカオカエデ

 

この蛾は、年1化の発生で、成虫が11月~1月に羽化して、羽化後すぐにメス成虫が性フェロモンを分泌し、オス成虫を誘引します。ちなみにメス成虫の翅は退化していて飛ぶことはできません。

メス成虫は、樹木の幹や枝に卵を産み付けます。卵で越冬して翌春に樹木の新葉が出るころに孵化した幼虫は2週間ぐらい新葉を食べ続け蛹になります。土中で蛹化し、このまま冬になるまでじっとしていて、寒い時期になると羽化して成虫になります。このサイクルで一生を過ごします。因みにオスもメスも成虫は、口が退化していて餌が食べられません。寒い冬に成虫になるので餌を食べると体の水分が凍ってしまうからだと言われています。

餌を食べなくても繁殖できるように進化していったのですね。幼虫は、柔らかい新葉を食べるグルメな蛾ですが、成虫は餌が食べられないなんてちょっと可哀そうですね。

クロスジフユエダシャクのオス

写真② クロスジフユエダシャク雄成虫

ゴルフ場で、この蛾を見つけても芝に関しては、一切食害することはないので、実害はありません。但し、周辺の樹木が被害に遭う場合は、防除する必要があるかと思います。

成虫防除の場合は、12月・1月に、幼虫防除の場合は、翌春の新葉が伸びる春に登録薬剤を処理して下さい。

 

(参考文献)

List-MJ 日本産蛾類総目録 [version 2]

http://listmj.mothprog.com/