これまでの中ではかなりの大物外来種。植物は植物でも、今回は樹木の外来種です。
(マメ科ハリエンジュ属 落葉高木)
ハリエンジュは1873年に、山腹緑化樹、街路樹として北米から日本に導入されたマメ科ハリエンジュ属の落葉高木です。すでに123の一級河川の内、92河川(H8~12年度)で存在が認められており、急激に分布を拡げている外来種です。希少な自生種を駆逐する恐れがあることから、今では日本の侵略的外来種ワースト100になっています。かつては土壌浸食の防止や飼料木、薪炭材、養蜂における蜜源植物などに活用されていきましたが、和名のハリエンジュはマメ科クララ属のエンジュに似ていて棘があることに由来しています。
別名はニセアカシアですが黄色い花で知られるアカシア属のアカシアとはまったくの別種です。輸入当初はアカシアと呼ばれていましたが、その後、本物のアカシアが入ってきたことで、ニセと付いたと言われています。
落葉高木と呼べるほど育ったハリエンジュ
樹木と呼ぶにはまだまだ小さい灌木レベルのハリエンジュ
原産地:北アメリカ
世界での分布:ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オーストラリア、南アメリカ
日本における分布:北海道、本州、四国、九州、琉球
定着段階:分布拡大期~まん延期
環境省 外来種リスト:国外外来種№179、産業管理外来種
葉は奇数羽状複葉(きすううじょうふくよう)と呼ばれ、小葉が羽のように葉軸の左右に並んで付き、先端部分にも小葉が付きます。葉柄と葉身の間に生える托葉(たくよう)という部分が棘になっていて、ハリエンジュの名前の由来となった部分です。
4~6月頃に枝の先に蝶のように見えるマメ科植物に特有の白い蝶形花を付けます。花には蜜が豊富で、養蜂業者には蜜源として重宝されていて、てんぷらにすると美味しいとの評判です。
(左)奇数羽状複葉、(右)偶数羽状複葉
<ハリエンジュの発生消長>
秋に種子が熟し、土壌に落ちてシードバンクを作ります。河川で分布が拡大した原因のひとつに、夾が撥水性で軽いために水によって流されやすいことが考えられます。実生によって旺盛に繁殖し、種子の発芽率は90%以上というデータもあり、種子の寿命も長いとされています。また、根茎や切り株からも旺盛に萌芽し、伐採した年内に4.5mまで生長した例もあります。
旺盛な繁殖力とあわせて生育速度が速いことから、導入の当時から緑化木として重宝された反面、他の樹種への転換ができなくなる危険性が指摘されていました。
芽吹き前の伐採は夏の伐採より萌芽枝の発生を促進するので注意が必要です。
目地から発生するハリエンジュ背後のフェンス内には高木化したハリエンジュがある
有効な防除方法は未だに確立されていませんが、萌芽の多くは根茎に由来することから、伐採の際に抜根することが有効です。
弊社の研究により、植物成長調整剤がハリエンジュの生長抑制に有効であることが明らかになりました。
人の手によって導入されたにもかかわらず、人の都合で悪者なった木ですから、人の責任で最後まで面倒を見てあげたいですね。
目地から発生し植調剤で抑制されているハリエンジュ
<参考文献>
コラム 「緑化植物 ど・こ・ま・で・き・わ・め・る」/福永健司/緑化工誌J.Jpn. Soc. Reveget. Tech.,32(3),447
原色図鑑 「芽ばえとたね」/著者浅野貞夫/株式会社全国農村教育協会
Ⅲ対策を優先すべき主な外来植物10種の生態的特徴と対策手法/
国土交通省HP http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/
伐採・抜根によるハリエンジュ駆除効果と今後の課題/丹野幸太、前田諭