弊社の芝草管理に関するアドバイザリーを長年務めているマイカ・ウッズ博士の新連載コラム「Dr.マイカの芝草管理」を新たに始めさせていただくこととなりました。
マイカ博士は、世界各国のゴルフ場や芝生地を訪問し、芝生に関する研究を進め、現場に役立つ芝生管理の情報提供を続けています。芝草関連の学術誌等でいくつもの論文掲載、学術賞受賞は10回を超え、世界各国で開催されるセミナーでは数え切れないほどの講師を務められています。
今回のシリーズは、マイカ博士が運営しているアジアン・ターフグラス・センターのウェブサイト(https://www.asianturfgrass.com/)を通じて世界に発信している記事の中で、2019年に日本からのアクセス数が多かった記事10本を翻訳し、コラムとして掲載していきます。
芝生管理のプロフェッシャルな方だけでなく、芝生に興味のある皆様にもお役に立てる情報として発信していきたいと思います。
アジアン・ターフグラス・センター 主任研究員
マイカ博士は、アジアン・ターフグラス・センタ―創設者で主任研究員である。1998年オレゴン州立大学卒業後、世界を精力的に周りアジア、オーストラリア、北米、ヨーロッパにてデータ収集、ゴルフ場グリーンキーパーへのアドバイスを行ってきた。2001年から2005年まで米国ニューヨーク州コーネル大学にてフランク・ロッシー氏(コーネル大学准教授)とともに学ぶ。
この世界中の芝生における幅広い分野での研究は、PACE Turfとのコラボに繋がった。これは、MLSNガイドラインすなわちあらゆる地域の気候に適応することである。このことを彼は“any grass, anywhere”と呼ぶ。
Micah Woods:the official siteより(https://www.micahwoods.com/)
第1回のテーマは「酷暑を乗り切る」です。
2008年の5月からGolf Course Seminar (ゴルフ場セミナー) 誌に連載コラムを書いている。通常は見開き2ページのもののコラムなのだが、 昨年に マイカの時間 The BOOK が出版された時には2回にわたって4ページもののコラムになった。これから紹介する記事は2018年の9月号のためのもので、初めて3ページという長さになった。
テーマは、クリーピングベントグラスを夏越しさせるための12のポイントである。日本のゴルフコースはほとんどがベントグラスグリーンなのだが、この 2018 年の夏は記録的といってよいほどの酷暑に見舞われた。そこで、次のような点についてアドバイス記事を書いた:
さて、酷暑というが、どの程度のレベルの酷暑について書いていたのかというと?
まず、何でもそうだが、所定のレベルを超えた状態が続く(たとえば、気温が20℃を下回らなくなった)ことを開始点とする。酷暑の場合のイメージは、一日の平均気温が 25℃以上になった時だ。気温がここまで上昇すると、散水を行っているターフでも、地温が平均気温と同じになる。寒地型芝草は、気温が常時 20℃を超えるようになるとまともに育たない。25℃は極めて過酷な環境だ。
世界の三か所でこの年の気温データを拾ってみた。一か所目は、熊谷(埼玉県、東京近郊)で、ここは7月23日に日本観測史上の最高気温 41.1℃を記録したところ。 二か所目は米国ペンシルバニア州のアヴォンデール、三か所目は同じく米国の、サウスカロライナ州ブラックヴィルである。
これら三か所の「酷暑」を比べて見よう。
アヴォンデールでは、6月中旬に平均気温が20℃を超え、この状態がつい一週間前まで続いた。ブラックヴィルでは、5月初旬に平均気温が20℃を超え、5月下旬には平均気温が25℃を超え、この状態がほとんどそのまま続いた。熊谷では、5月中旬に平均気温が20℃を超え、7月と8月には、平均気温が30℃を超えた日が続出した。
念のために繰り返すが、日本のグリーンはベントグラス。筆者はベントグリーンの夏越しについての記事を書いたのだ。アヴォンデールのような酷暑の地では、ほとんどのグリーンがベントグラスかスズメノカタビラであろうと思う。ブラックヴィルのような酷暑の地では、今後はグリーンの暖地型芝草への転換が、かなり進むと思う。だが、熊谷という酷暑の地では、今も多くのグリーンがベントグラスである。
公開日:2018年9月28日
ゴルフ場セミナー2018年9月号への寄稿より
https://www.asianturfgrass.com/2018-09-23-catching-up-on-reading-heat-stress/