今回は、河川堤防を中心に猛威を拡げつつある外来種です。
(イネ科モロコシ属)
セイバンモロコシは1943年に千葉県で初めて発見された地中海原産のイネ科モロコシ属の多年生の外来種です。
現在では、畑地、樹園地、牧草地のほか、特に河川堤防で問題となっています。世界的にもトウモロコシやサトウキビ畑の強害雑草として問題になっています。若い株や上位葉に青酸が含まれているため、家畜が中毒を起こすことがあります。乾草は安全なようですが、踏み付けや刈り取りなどのストレスを受けた個体ほど多量の青酸を含むことが知られています。
畑の近くに穂を伸ばすセイバンモロコシ
原産地:地中海沿岸のアフリカ
世界での分布:ヨーロッパ、アジア、オセアニア、北アメリカ、南アメリカ
日本における分布:本州、四国、九州、琉球、小笠原
定着段階:分布拡大期~まん延期
環境省 外来種リスト:国外外来種№157、その他の総合対策外来種
多年生のセイバンモロコシは種子と地下茎から両方で繁殖します。
多産性で1個体あたり13,000粒以上の種子を付けることが報告されています。種子は非常に軽く風で散布されます。また、種子の寿命は比較的に長く、土中に埋土種子集団が形成され、休眠覚醒した種子は梅雨時期に発芽します。
※萌芽・出芽は文献からの推定です。
また、春に地下茎から萌芽し、気温が上がり始める初夏から一気に茎葉部を伸ばします。草高は2m程度まで達し、秋に赤味を帯びた小穂を付けます。
再生力が強く、刈込んでもすぐに茎葉部が再生します。また、茎が千切れやすいため抜き取る際に地下部が残りやすい植物です。窒素の多い肥沃な土壌を好みます。
目地からも発生するセイバンモロコシ
少し赤味のある黄褐色の小穂
河川によっては、堤防面積の9割を覆うほどに繁茂しているセイバンモロコシですが、地下茎からの再生力の強さに反して、耐侵食性は低く、土壌保全には向いていないようです。また、草高は2m以上にもなることから、視認性が低下し、巡視の妨げになります。植栽された芝がセイバンモロコシの被圧により衰退することからその効果的な防除方法が求められています。
しかしながら、日本のセイバンモロコシについての生態や防除方法の研究は、海外に比べて立ち遅れています。緑地管理に従事する方々と連携して、まずは敵を知るための活動が重要となってきそうですね。
<参考文献>
雑草紹介シリーズ セイバンモロコシ(Sorghum halepense(L.)Pers.)/伊藤操子(特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所)
原色図鑑「芽ばえとたね」/著者浅野貞夫/株式会社全国農村教育協会
夏作飼料作物における帰化雑草の発生実態調査報告書/独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
畜産草地研究所
河川基金助成事業「河川堤防に生育する帰化植物セイバンモロコシの蔓延防止に向けた発芽・生育特製の解明」/
東京農業大学院農学生命科学研究科・山田晋
持続可能な堤防植生の維持管理へ向けて~職員による除草コスト縮減の取り組み~/新垣 亜以・黒田 公平