コラム

<身近な雑草シリーズ3>「ホトケノザ」

 

まだ残る寒さのなかに、かすかな暖かさが感じられる季節になりました。冬の間は落ち葉や霜で覆われていた地面にも芽生えの緑が揺れ、樹木を見上げれば、枝先にふくらんだ蕾や新葉が顔を覗かせています。春がやってきました。

 

今回ご紹介する雑草は、シソ科オドリコソウ属のホトケノザです。北海道を除く日本全国の畑や道端でごくふつうにみられる越年生(二年生)の自生種で、晩秋から冬にかけて芽を出し、3月から6月にかけて紫色の花を咲かせます。気候によっては12月頃からと、一足早く開花する個体もあります。高さは10~30cmにまで成長するため、見つけやすい春の植物のひとつです。

ホトケノザの姿をもう少し詳しく見てみましょう。茎には4つの稜(りょう)(角張り)があり、断面は四角形に見えます。これはシソ科の植物に共通する特徴で、茎をつまみ指の間で転がせば、その特徴がはっきり感じられます。そのほか葉が対生につくことや、紫色の唇形花(唇のように上下に分かれた花弁)をつけること、閉鎖花(開かない花)が混じることもホトケノザの特徴です。

 

 

 

そんなホトケノザですが、間違えやすい植物が2種類あります。まずはキク科ヤブタビラコ属のコオニタビラコ(学名:Lapsanastrum apogonoides、別名:タビラコ)です。実は春の七草のひとつの「ほとけのざ」として食用にされるのはこのコオニタビラコで、分類も姿かたちも全く異なりますが、名前で混同しやすい植物です。シソ科のホトケノザは、総じて食用には向かない植物という評価がされているようなので、七草摘みの際には注意が必要ですね。

ちなみにホトケノザの和名の由来は「仏の座」です。器のようにつく葉の形が、仏像の台座としてあしらった部分に似ていることから名づけられました。この台座部分の意匠にも種類があり、なかでも「蓮華座」と呼ばれるものに似ています。そのほかサンガイグサという別名もあり、こちらは対生の葉が段々につくことから与えられた名前です。

 

 

 

 

もうひとつの似た植物は、ヒメオドリコソウ(学名:Lamium purpureum)です。こちらはホトケノザと同じシソ科オドリコソウ属に分類されている外来種で、形態学的な特徴をいくつか共有しています。特に見分けにくいのは芽生えから少し成長した時期です。よく観察すると葉脈や鋸歯の密度などの細かな違いがありますが、この段階ではどちらも半円形または心円形の葉をつけており、ひと目ではわからない場合があります。

 

 

開花段階に近づくにしたがって、色、葉柄の長さ、葉の形などの草姿の差が大きくなります。遅くとも花期が重なる4~5月には、両種が似た雰囲気を持ちながらも異なる植物であることがはっきりわかるでしょう。

ホトケノザはゴルフ場などのスポーツを行う芝地では雑草になりますが、路傍を美しく彩ってくれる植物でもあります。ヒメオドリコソウとは育つ場所も似ているため、隣り合って咲いている風景に出会えるかもしれません。春のお散歩を楽しむ際はぜひ探してみてください。

 

 

参考:

・「山渓ハンディ図鑑 野に咲く花 増補改訂新版」山と渓谷社

林弥栄 改訂版監修 門田裕一

引用:

・文化庁 文化財デジタルコンテンツ https://cb.bunka.go.jp/ja/

「大報恩寺 釈迦如来像」

・いらすとや https://www.irasutoya.com/

七草のイラスト「ほとけのざ・仏の座」